従業員数別労務管理(50名未満編:2025年12月1日現在)
従業員数別に行う主な手続きについてご紹介します。なお、大半網羅したつもりではありますが、抜け漏れが生じている可能性があることと、年月の経過によって情報が古くなっている可能性が生じます。ご容赦のほど、お願い申し上げます。
従業員数:0名
従業員は雇用していないものの、代表取締役一人のみ、あるいは数名の取締役しかいない法人が、役員に報酬を支払う場合、給与支払事務所等を設けてから1か月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を給与支払事務所等の所在地の所轄税務署に届け出ます。
報酬を支払う場合、源泉所得税や住民税を控除することになります。通常は翌月10日までにこれらの税を納付することになりますが、正直、毎月納付するのも面倒だと思う方もいらっしゃいます。給与の支給人員が常時10人未満の場合でしたら、所轄税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を届け出し、住民税を納付すべき役所に「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を届け出することで、年2回、まとめて納付すればOKになります。
法人の場合、健康保険と厚生年金保険は、代表取締役一人であっても、役員報酬が発生してれば、加入義務が生じます。法人の所在地を管轄している年金事務所にて「健康保険・厚生年金保険新規適用届」「健康保険・厚生年金保険資格取得届」などを届け出してください。
従業員数:1名
従業員を1人でも雇用する場合、その従業員に「労働条件通知書」を交付します。記載すべき事項は法令により決まっています。従業員が正社員の時はもちろんのことながら、パートタイマーであっても、労働条件通知書を交付することになっています。よくあるのは、労働条件通知書の記載事項を活かしながら、「雇用契約書」の形式にして採用者と契約書を交わすパターンです。
また、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿(タイムカード)」「年次有給休暇管理簿」を作成し、これらを元に労務管理(特に給与計算)を行って行きます。
この従業員が正社員、または正社員の4分の3以上働くパートタイマーで、雇用期間の定めのない契約、1年以上の雇用解約、または1年以上働く見込みがある人である場合、入社にあたっては「雇入れ時の健康診断」を行い、1年に1回「定期健康診断」を実施します。
従業員を雇用した場合、その事業所を管轄する労働基準監督署に「適用事業報告」という書類を届け出ます。
さらに、雇用した従業員が法定労働時間(原則:1日8時間、1週40時間)を超えて時間外労働をしてもらう可能性がある場合や、法定休日(1週1日または4週4日)に労働させる可能性がある場合は、「時間外労働・休日労働に関する協定届(通称:三六協定届)」を届け出ます。
従業員を一人でも、短期間であっても雇用すると、労災保険に加入する義務が生じます。そこで、所轄の労働基準監督署に「労働保険保険関係成立届」を届け出るとともに、「労働保険概算保険料・確定保険料申告書」でおよその保険料を計算して、納付します(労災保険や雇用保険は前払いです)。
雇用した従業員が週に20時間以上働く契約で、31日間以上働く見込みがある場合は、原則として雇用保険の加入義務が生じますので、所轄のハローワークで「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険資格取得届」などを提出し、加入手続きを行います。
なお、三六協定届の有効期間は1年間です。1年に1回届け出し直すのを忘れないようにしましょう。また、「適用事業報告」「三六協定届」「労働保険保険関係成立届」は事業所単位(支店、店舗、営業所別ということです)で届け出します。企業全体で1回手続きをすればいいということではございません。特に三六協定届と労働保険保険関係成立届は新しい支店や店舗等を増やす都度、手続きするのをお忘れなく。
ちなみに、労働保険保険関係成立届を出した後、通常の業種の場合は、「継続事業の一括申請」の手続きをすることで、「労働保険概算保険料・確定保険料申告書」を事業所別に計算し納付するのではなく、本社でまとめて計算し・納付することができるようになります。
なお、物品の販売の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業で、常時9人以下の事業所(「特例措置対象事業場」と言います)は、1日の法定労働時間は8時間ですが、週の法定労働時間を44時間とすることが認められています。
従業員数:5名
法人ではなく個人事業の場合、常時5人以上の従業員が働くようになった時点で、厚生年金保険と健康保険への加入が義務づけられます。ただし、飲食業やクリーニング業など一部の業種を除きます。法人として飲食業やクリーニング業を営んでいる場合は、代表取締役1人でも役員報酬をもらっていれば加入義務が生じます。ご注意ください。
従業員数:10名
企業全体で常時10 ⼈以上となると、所得税・住⺠税ともに年2回まとめて納付する納期特例は使えなくなります。管轄税務署へは「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を届け出、各市区町村役場には「特別徴収税額の納期の特例の要件を⽋いた場合の届出書」を届け出ます。納期特例が使えなくなった以降は、毎⽉10 ⽇までに所得税や住⺠税を納付することになります。
次に就業規則。企業単位ではなく、事業所(店舗・営業所等)単位となりますが、常時10 名以上の事業所は就業規則を作成する義務と、その事業所を管轄している労働基準監督署に届け出る義務が発⽣します。
就業規則には記載すべき事項が決まっています。インターネットで雛形をダウンロードして、労働時間や休⽇や賃⾦の約束事など、各社まちまちのところをアレンジするだけでも法的な要件を満たした就業規則を作ることはできると思います。ただ、就業規則は従業員との契約書のようなものです。従業員とトラブルが起きないうちは、インターネットの雛形でも⼤した⽀障はありませんが、従業員とトラブルが起きた時にはほとんど役に⽴ちません。無料で⼿に⼊るような雛形は、服務規律や懲戒規定がお飾り程度にしかなっていないケースが⼤半だからです。
そういう意味では、従業員が10 ⼈未満であっても、ちゃんとした就業規則を作っておくことをお勧めします。
また、常時10 ⼈以上50 ⼈未満の従業員を使⽤する事業場には、安全衛⽣推進者または衛⽣推進者を選任することが義務づけられています。⼤半の業種は衛⽣推進者でよいのですが、下記の業種については安全衛⽣推進者を選任することになっています。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加⼯業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、⽔道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品⼩売業、家具・建具・じゅう器⼩売業、燃料⼩売業、旅館業、ゴルフ場業、⾃動⾞整備業、機械修理業
安全衛⽣推進者の主な業務は、下記の通りです。
労働者の危険⼜は健康障害を防⽌するための措置に関すること
労働者の安全⼜は衛⽣のための教育の実施に関すること
健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること 等
こうした安全衛⽣推進者の業務のうち、安全に関する業務を除いた業務が衛⽣推進者の業務です。
安全衛⽣推進者⼜は衛⽣推進者を選任したとき、役所への届け出は不要ですが、選任された⼈の⽒名を作業場の⾒やすい箇所に掲⽰する等して、職場の従業員に周知させなければなりません。
従業員数:21名
企業全体の雇用保険の被保険者数が21⼈以上になると、「⾼年齢者雇⽤状況等報告書」という書式を⽤いて、毎年6 ⽉1 ⽇現在の⾼年齢者の雇⽤状況を、7 ⽉15 ⽇までに本社を管轄している公共職業安定所(ハローワーク)を経由して厚⽣労働⼤⾂に報告することになっています。提出しなければならない会社には、毎年5 ⽉下旬ごろに「⾼年齢者雇⽤状況報告書」が郵送されてきます。
従業員数:40名
企業全体で常用雇用者数が40⼈以上になりますと、1名以上の障害者を雇⽤する義務が⽣じます。2026年(令和8年)7月からは法定雇用率の引き上げに伴い、常用労働者37.5人以上が対象となります。
障害者雇⽤率制度の上では、⾝体障害者⼿帳、療育⼿帳、精神障害者保健福祉⼿帳の所有者を障害者としてカウントします。また、「障害者雇⽤状況報告書」を⽤いて本社を管轄している公共職業安定所(ハローワーク)を経由して厚⽣労働⼤⾂に報告することになっています。基本的な仕組みは「⾼年齢者雇⽤状況報告書」と同様です。
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