【コラム】小さな社労士事務所が生き残るコツ

2003年11月1日に社会保険労務士事務所を開業して丸22年が経過し、23年目に突入しました。

お客様が一社もない状態で独立してから1年間は極貧生活。次の1年も地面スレスレの低空飛行。3年目でようやく飯が食えるようになったと思ったら、当時の自分のキャパを仕事量が越えました。

独立当初は一人で気楽にやろうと思っていたのですが、そんなことも言ってられず、2006年11月より、スタッフ(宮崎)を雇用することに。スタッフの雇用に伴い、オフィスも自宅からマンションの一室へ移転しました。

2008年3月、もう一人のスタッフ(根岸)が入社。ここからしばらく男性3人の時代が続きます。

当社はありがたいことに会費制ビジネス。毎月一定額の顧問料を頂戴しながら、労務に関するご相談を承ることがメインのサービスです。毎月の売上が読めるので、その売上の範囲でコストを管理していればなんともない・・・はずだったのにリーマン・ショックで大口顧客が激減。

2人のスタッフに給料を支払い、家賃をはじめとする経費を支払うだけで精いっぱい。会社の口座と自分の口座にある預金残高とにらめっこしながら、「とりあえず、こちらの口座から支払っておこう」という具合の綱渡りが数年続きました。金融機関から数百万円借りたこともありましたが、いつの間にか人件費の支払い等で消えてしまいました。

どうにもこうにもならず、私の報酬減額はもちろんのことながら、二人のスタッフにも頭を下げて給料を下げてもらうことに。

独立1年目も金がありませんでしたが、自分(と家族)がガマンすればよかっただけでした。スタッフを雇用しているのに、スタッフに給与を支払えないプレッシャーとストレスはハンパなかったです。自分の才覚のなさのために、スタッフとそのご家族に多大なご迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳ないことをしてしまいました。

安倍元首相が「アベノミクス」を唱え始めた頃、ようやく苦境を脱出。

宮崎や根岸にアシスタントをつけて仕事をしてもらうようになり、現在は男性3名、女性6名、合計9名の事務所となりました。

こんなわけで、決して経営が上手なわけでもなく、かろうじて生き延びているだけではありますが、こうした浮き沈みを経験しつつも、「こうすれば生き残れるのではないか?」と考えていることをシェアします。

1 お客様を大切に

経営が苦しい時には「新しいサービスを始めてはどうか?」「新しいお客様を開拓してはどうか?」と考えがちでした。でも、そんな時こそ、今、自分ができること・していることで、今のお客様に対してできることはないかを考える方が、道が切り拓けます。

苦境を脱する1ヶ月前にこのことに気がつき、毎朝、お客様のリストを見ながら、「A社さんにできることはないか?」という具合に考えていました。結局、苦境を脱することができたのは、新規のお客様ができたことなのですが、苦境を通して既存のお客様を大切にすることに気づけたことは、自分にとっては大きな収穫でした。

2 スタッフを大切に

当社は他社と比較して、さほど給与が高いわけでもなく、人気の業種ということでもなく、知名度が高い会社でもなく…という具合に、「・・・でもなく」という言葉が限りなく続くような会社です。そればかりか、給与が下がっても会社を辞めずに一緒に歩み続けてくれたスタッフを大切にしなくて、何を大切にするのか…。

その時の苦労を一緒に背負ったわけではない、あとから入社したスタッフについても、引越しなどのやむを得ない事情がない限り、大半の人が辞めずに働き続けており、知識やスキルを磨き続けてくれています。事務所全体としてできることが増えたり、できる人が増えたりすることができて、本当にありがたいです。

3 お取引先を大切に

私がご料金を支払う側になるお取引先についても、大切にすることが重要だと思います。経理やIT、名刺のデザインをしてくれる会社など、多くの会社の方に当社の業務の一部をお手伝いいただいています。対価を支払っているとはいえ、どう転んでも自分ではできないことをしてくれているプロフェッショナルばかり。対価を超えるサービスをしていただいていると思っています。敬意と感謝の気持ちを忘れずにおつきあいを継続していきたいです。

上記には挙げておりませんが、家族や知人・友人にも同じことが言えます。私もムラはありつつも、多少は社会に貢献しているつもりではあります。ただ、私ができることなど微々たるものですので、社会全体に対する私の貢献度合いを数字にしたら、限りなく0に近くなってしまいます。

一方、社会から恩恵を受けている度合いを数字にしたら、無限大といってもいいような気がします。服を着るシーン一つとっても、服を作ってくれた人がいます。服を工場から運んでくれた人がいます。服を販売してくれた人がいます。という具合に、大勢の人の支えがあって今の自分があります。

私を支えてくれている人の99%は私の知らない人です。私が着ている服を作ってくれた人や服を工場から運んでくれた人の名前も顔も存じ上げません。そう考えると、顔や名前が分かる人たちは、私にとっては貴重な方々です。心から感謝の気持ちを持って接したいです。

お客様へのサービスアップのために、自分自身の見識を広げ深めていくことも大切ではありますが、これとて、お客様からのご相談を通して鍛えられています。もう、ホント感謝しかありません。

小さな社労士事務所が生き残るコツは、自分を支えてくれている方々に敬意と感謝の気持ちを持って接しつつ、微力ではありながらも全力で相手の方の役に立つことだと思います。

※写真は2010年頃。宮崎・根岸ともに31~32歳。私も40歳になるかならないかくらいだと思います。

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