【コラム】AIと社労士

先日、生成AIの代名詞ともいえるChatGPTが「5」にバージョンアップしました。精度が格段に向上したとの評判です。

試しに40ページ弱ある就業規則をコピペして「誤植探し」を依頼してみました。するとわずか5秒ほどで回答が始まり、誤字脱字の指摘はもちろん、「『第3項によると』は『第2項によると』の誤りではないか?」といった構造的なチェックまで行ってくれました。文脈を理解しているからこそできる指摘です。

実際に一つひとつ確認すると、まさにその通り。私が同じ作業をすれば30分から1時間はかかったはずで、その効率性に驚かされました。

次に、お客様からの相談の要旨と、それに対する私の返信文を入力し、「人事労務の専門家として、この返信文へのアドバイスをお願いします」と依頼しました(もちろん社名や個人名は削除済みです)。すると数秒で返ってきた回答には、文章への感想や評価、改善点が的確に記されていました。人事労務に携わって22〜23年の私から見ても、納得せざるを得ない助言内容でした。

さらにChatGPTは会話も可能です。先日、家族で試したところ、84歳の義母が「これだけ会話できるなら、一人暮らしのお年寄りも寂しくないねぇ」と感想を漏らしていました。電話で誰かと話していると思ったら、その誰かはAIだった──そんな時代が到来しました。

あと数年もすれば、仕事のあり方やAIとの関わり方は劇的に変わるでしょう。業種や人にもよりますが、今は添削やアドバイスを求めるために利用している人が多いように思いますが、近い将来、専門家が普段行っている相談対応そのものをAIが担うかもしれません。例えば、Zoomの画面に現れたAIが、図やグラフを提示しながらお客様からの専門的な質問に答える。あるいは「人間が相談しなければ動作をしないAI」AIから、「相談しなくても先回りして教えてくれる」AIへと進化する。そんな未来もまもなくです。

ではそのとき、人間はどこで価値を発揮できるのでしょうか。私の予想は「温かみ」や「寄り添い」です。

飲食業に例えると分かりやすいかもしれません。飲食店の中には接客にコミュニケーションを求めることが少ないお店もあります。そういうお店ではAI接客が主流を占めるようになるでしょう。一方、同じ飲食店でも、人が料理を作る姿を見せることや、店員とのやり取りを含めて、お客様の満足度を引き出そうとするお店もあります。AIには心がありません。だからこそ「心を込めて寄り添うこと」は人間だけができる価値になるように思います。

お客様はAIにどんな質問をすれば効率よく答えを引き出すことができるのかが分からないかもしれません。そのときに専門家がそばにいて、代わりにAIへ相談したり、AIの回答を補足したりする。そんな「橋渡し役」としての役割が必要になるのではないでしょうか。

AIは論理や計算を担い、人間は気持ちや心のケアを担う。AIと人間、それぞれの強みを生かし合う未来を想像しています。(イラストはChat GPTに「chat GPTと人間が楽しく会話している様子を絵にしてください。」と頼み、描いてもらったイラストです。)

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