今後の社会保険の適用拡大の方向性

2024年12月10日、第23回社会保障審議会年金部会が開催されました。こちらの議事録を確認すると、今後、社会保険の適用拡大の企業規模要件(現在51人以上)や賃金要件(現在月額8万8千円以上)の撤廃の方向に向かっているようです。

以下、議事録より、ポイントを抜粋します。

① 賃金要件の撤廃

  • 最低賃金の引上げの動向を踏まえると、数年のうちに週20時間の労働で賃金要件を基本的に満たすことになると考えられることから、賃金要件を設けることの必要性が薄れており、撤廃してもよいのではないか。
  • 元来、被用者保険の加入要件は、1週間の労働時間及び1か月の労働日数が通常の労働者の4分の3以上と労働時間で判断しており、労働時間のみで判断することがあるべき姿なのではないか。
  • 「壁」という言葉が国民の間の誤解さらには就業調整を誘発しかねないことには、十分な注意が必要。8.8万円という数字をなくすことで国民に向けてより簡明なメッセージを発することになることに鑑み撤廃が適当。
  • 都道府県労働局長の許可を得て、最低賃金を減額することができる特例があるが、賃金要件を撤廃する際には、特例対象となっている障害者などへの影響についても配慮が必要ではないか。

② 週20時間労働でも最低賃金の関係で賃金要件を満たさない場合がありうることを踏まえた撤廃の時期の配慮

  • 今後の最低賃金の動向次第ではあるが、撤廃する場合には全国47都道府県で8.8万円を超える状況の達成を前提とすべきではないか。
  • 賃金要件を現時点で撤廃するには議論が足りていない。最低賃金が低い地域で暮らす、106万円未満の年収の人が、106万円以上の年収の人と同額の保険料となり、年収の低い人の負荷が高まるのではないか。


中野人事法務事務所ブログ

中野人事法務事務所より人事・労務に関連する情報などをお届けします。