社会保険の適用拡大、企業規模要件撤廃の方向へ

2024年7月1日、厚生労働省において、「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」が開催され、【議論の取りまとめ(案)】が公表されました。

公表された資料によると、本年10月より被保険者数51名以上の企業を対象としている企業規模要件について「本懇談会の議論においては、 労働者の勤め先や働き方、 企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、 経過措置である本要件は撤廃の方向で検討する必要があるとの見方が大勢を占めた。」とのことから、近い将来、企業規模要件は撤廃される可能性が高いです。

なお、他の要件についてのポイントは以下の通りです。

1 労働時間要件

20時間から10時間へ引き下がる可能性を残しつつも、現状維持となる可能性もある書き方をしています。公表された文章のうち、結論的な文章は以下の通りです(一部改変)。

2028年10月より雇用保険の被保険者の要件のうち、週の所定労働時聞を「 20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象が拡大されること等等を踏まえ検討が必要との見方がある一方、これまでの被用者保険の適用拡大においても指摘されてきた保険料や事務負担の増加という課題は、対象者が広がることでより大きな影響を与えることとなる。
また、雇用保険とは異なり、国民健康保険・国民年金というセー フテイネットが存在する国民皆保険・皆年金の下では、 事業主と被用者との関係性を基盤として働く人々が相互に支え合う仕組みである被用者保険の「被用者」の範囲をどのように線引きするべきか議論を深めることが肝要であり、 こうした点に留意しつつ、 雇用保険の適用拡大の施行状況等も慎重に見極めながら検討を行う必要がある。

2 賃金要件

公表された文章を確認する限り、現状維持、最低賃金額の上昇の推移によっては、賃金要件撤廃の方向になる可能性もあります。

公表された文章のうち、結論的な文章は以下の通りです。

本要件の引下げについては、 これまで対象としていなかった働き方をする労働者に適用範囲を広げるという点で、 労働時間要件の引下げの検討で指摘された論点と同様の側面がある。 同時に、 本要件特有の論点として、 年収換算で約106万円相当という額が就業調整の基準として意識されている一方、 最低賃金の引上げに伴い労働時間要件を満たせば本要件を満たす場合が増えてきていることから、 こうした点も踏まえて検討を行う必要がある。

3 学生除外要件

こちらは見直しはされず、現状維持となるようです。


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