【コラム】母の四季

吉田松陰によると、人にはそれぞれの寿命に応じた四季があるそうです。

「(前略)人間にもそれに相応しい春夏秋冬があると言えるだろう。十歳にして死ぬものには、その十歳の中に自ずから四季がある。二十歳には自ずから二十歳の四季が、三十歳には自ずから三十歳の四季が、五十、百歳にも自ずから四季がある。」(『留魂録』吉田松陰著)

私の母は昭和21年生まれ。現在79歳です。私が知っている母は元気にあふれていて、チャキチャキと手際よく家事をこなし、友達や知人が多く、面倒見のよい人です。

それはだいたい今でも同じなんですが、いつの間にやら背中が丸まってきたなーと思っていたら、2ヶ月くらい前から足腰が急に弱ってしまいました。床に座っている状態から立てなくなってしまったのです。

布団をベッドに変え、掘りごたつをテーブルと椅子にして、生活がしやすいようにしましたが、椅子とはいえ、座った状態から立ち上がるのが大変そうです。

私は母の人生の季節を「秋」くらいに思っていましたが、もしかしたら「初冬」くらいになっているのかもしれないなと思い直しました。日々の変化がちょっとずつなので、ついつい自分が子供の頃の母のイメージを持って母と接してきましたが、私が20代の頃の肉体ではないのと同じで、79歳としての母を心に受け止めなければ…。

季節の四季の場合は、冬の後にまた春が来ますが、人生の四季の場合は冬で終わり。生まれ変わりがあって、母に次の春が訪れることがあるかもしれませんが、今世を生きている私は、今の母とはもう会えません。そう考えだすと、寂しくなってしまいます…。

まぁ、まだ来ていない未来のことを想像して寂しくなるのはもったいない。今の母は足腰が衰えたとはいえ、まだできることがたくさんあるし、何よりまだ生きています。父に対しても同じ思いではありますが、過去や未来に気持ちをフォーカスするのではなく、今日この日にフォーカス。母にとって日々楽しい思い出ができるよう、母に対する接し方や声のかけ方、話の聞き方を工夫していこうと思っています。

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